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高森明勅
2016.4.30 13:38

呆れ果てた「西尾・加地」対談(3)

西尾幹二氏はこんな発言を繰り返している。

「(雅子)妃殿下は公人で、ご病気はご自身を傷つけていますが、
皇室制度そのものをも傷つけている」

「(妃殿下のご病気は)『慢性』です。
快癒を期待できない慢性的な症状がだらだらとずっと続くという
と…。皇室の機能を損なう深刻な状態です。
国民と皇室を傷つけているんです。皇太子殿下も宮内庁も医療関係者
も、
総理大臣も知らん顔をしているのはまったくもって遺憾ですね」

 何とも呆れた妄想ぶりだ。

勝手に「快癒を期待できない」だの「慢性」だのと、無礼で酷薄な
“診断”を下し、
そのことを心配したり憂慮するのではなく、
「皇室制度そのもの」
を傷つけているとか、「皇室の機能」を
損なっているとか、
果ては「国民」まで傷つけていると非難。

更に、妃殿下の状態に皆「知らん顔」とか。

一体、誰が「知らん顔」などしているというのか。

同氏は皇室を「制度」とか「機能」でしか考えられないようだが、
具体的に「傷つけている」とか「
損なう」と表現しているものの
“実態”を、
ぜひ具体的に示して欲しいものだ。

皇室が果たしておられる役割は、
およそ以下の3種類に整理出来る。

(1)国事行為。
2)ご公務。
(3)祭祀。

これらのどこに「支障」が生じていると言うのか。

(1)は原則として、専ら天皇陛下だけが携わることが出来る。
陛下が海外にお出ましになったり、その他どうしてもやむを得ない
事情がある場合のみ、
陛下から皇太子殿下にご委任になる
(憲法第4条第2項、
国事行為の臨時代行に関する法律)。

そこに何の遅滞も生じていないのは言う迄もない。

(2)は慣例化したものもあるが、基本的に皇室の方々のお気持ち、
ご厚意によるもの。

従って、国民の側からあれこれ不平不満を申し上げる筋合いではない。

しかも現状、これについても特に「支障」
をきたしているような事実
はない。

(3)はどうか。

これは本来の趣旨からして天皇が主体となられる。
今上陛下が極めてご熱心に祭祀に取り組んでおられることは、
改めて申すには及ばないだろう。

その陛下がご高齢に配慮されて一部、
祭祀へのお出ましを控えられる
中、現在、
最も頻度高く祭祀にお出ましになっておられるのは
皇太子殿下だ。

西尾氏は果たして、その事実を知っているのか。

皇室の機能を損なう深刻な状況」なんて現実が一体、どこに
あるのか。

ましてや「皇室制度そのものを傷つけている」など、言い掛かりも
甚だしい。

そもそも「国民…を傷つけている」って何のことか。

このような妄想に囚われている頭脳の方こそ「深刻」
と言っては
失礼だろうか。

西尾氏は、天皇陛下をはじめ皇室のどなたでも、ご病気になられたら
制度そのもの”が傷つけられ、“機能”が損われて、
俺たち国民を傷つける」から断じて許さない!と考えているのか。
それとも、雅子妃殿下“だけ”は許せない!と考えているのか。

いずれにしても、皇室のご献身や恩恵についての自覚や感謝は、
皆無であるように見える。

ただひたすら皇室に対して、あれもして欲しい、これもして欲しいと、
既に欲しがっているものが与えられている事実にも気付かず、
泣きわめいて地団駄を踏んでいる幼児を思い浮かべてしまう。

長期療養中の雅子妃殿下やその周囲のお苦しみを拝察しようとする
気持ちの欠片もない。

いわんや皇室の恩恵の万分の一にでも報いる為に、
国民が何をすべきかという発想は、まるでないようだ。

(続く)

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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